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2025年7月7日更新
低学年児童341名の母親に、母子のADHDや退屈、集中傾向、母親の子どもへの反応度合いとコントロール度合い、子どもが好きな遊びと集中しやすい活動の回答を求めた結果、母親のコントロール度合いと子どもの集中傾向が強いと子どもの非オンライン志向が強い傾向にあり、一方、子どものADHD傾向や母子の退屈傾向が強いと、子どものオンライン志向が強い傾向にあることが示唆された。なお、オンライン志向の割合は男児で高い傾向にあった。非オンラインの遊びが好きな場合でもオンライン活動が集中しやすいとの回答は少なくはなく、健全なネット環境の整備が必要なことも示唆された。
近年、中高生や大学生などの若年層のオンライン依存(Internet Addiction、略してIA)が、世界的に懸念されている。彼らを対象とした海外の調査から、本人のASDやADHDの症状、親の養育態度や本人の退屈傾向が、IAに関連する可能性が示されているが、どのような養育態度がオンライン依存の抑制に関係するのかは結果が一貫しておらず、オンライン依存を防ぐ手立ては明らかではない。
こうした状況のなか、本研究では、海外でもまだほぼ報告のない、10歳未満の児童(7-9歳)のオンライン志向に関わる要因を、母親を対象に調べ、子どもの非オンライン志向には、親のコントロール力のみならず、子ども自身の自ら集中できる力の強さが関連すること、子ども本人のADHDや退屈傾向の強さのみならず、母親自身の退屈傾向の強さが子どものオンライン志向の強さに関わるという興味深い結果を見出した。また、非オンライン遊びが好きな子どもも、集中しやすい活動はオンライン活動との回答は少なくはなく、オンラインコンテンツ自体に没入的要素があることが浮き彫りにもなった。
以上を踏まえると、子どものオンライン依存を弱めるには、子どものオンライン志向の強さに、親自身の特性も関わる可能性も考慮したうえで、親が子どものオンライン活動に一定のコントロール力を持ち、子どもが自律的に、自分にとって有用な活動(オンライン活動を含む)に集中かつ有用な活動を取捨選択できるような力を育成し、特に子ども向けのオンラインコンテンツは整備する必要があるのではないかと考えられる。
集中傾向:日常の諸活動に対する集中のしやすさ
退屈傾向:日常みられる退屈のしやすさや飽きやすさ
Uehara, I., & Ikegaya, Y. (2025). Online orientation in early school grades: relationship with ADHD, boredom, concentration tendencies, and mothers' parenting styles. Frontiers in Psychology, 16:1592563. doi: 10.3389/fpsyg.2025.1592563
【研究に関する問い合わせ先】
お茶の水女子大学 人間発達教育科学研究所 教授 上原 泉
電話: 03-5978- 5259
Email: uehara.izumi@ocha.ac.jp
【取材に関する問い合わせ先】
お茶の水女子大学 広報?ダイバーシティ推進課(広報担当)
電話: 03-5978-5105
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